ブレント ・リテルにインタビュー「ギ vs ノーギ」
「ノーギのランクはギの帯にトランスファーできますか?」
(ジェイク)
ブレント、また会えて嬉しいよ。
今回は 10th planet そして「ノーギ*」と「ギ*」 について話しをしよう。
ブレントは、10th planetでノーギの黒帯を、ギの黒帯はグレイシーバッハから授与された世界でも数少ない両方の黒帯保持者だよね。
それは、自分自身よりバランスの取れたグラップラーだと感じている?
(ブレント)
確かに、私は間違いなく知識豊富なグラップラーだと信じているよ。両方の知識を十分に理解できているからこそ、ノーギでは学べないラペルガードについても理解しているしね。
ノーギのポジションはギでも使えるけれど、ギではそうはいかないんだ。例えば、フロントヘッドロックシリーズの、ダースからペルビアンネクタイまでの技は、道衣を着ていてもできるよね。もちろんスリップファクターが無い分、ノーギほど効果的ではないけれど。そういう意味では、黒帯を2つ持っていることは私の強みだと思っているよ。
だからといって自分自身を世界で最高のグラップラーだと感じたことは無いよ。
(ジェイク)
ギとノーギを50/50で訓練していて両方に慣れている人と、ほぼギのみに集中してトレーニングをする人がいるけれど、ギを脱いだ時の彼らにはもう黒帯の実力はないと思うかい?道衣を着ている時だけ、彼らは黒帯なのだろうか?ブレントはどう思う?
(ブレント)
おー これは物議をかもすテーマだね...
答えるのが簡単なものから始めようか。
ノーギの黒帯保持者が、道衣を着た時に黒帯を着けるべきではないと思っている。例えば、エディー・ブラボーの下でゼロから、グラップリングを学びノーギの黒帯をもらったとしよう。道衣を着て練習をした事がない彼らに、クロスチョークのやり方やエスケープの仕方、グリップの切り方がわかると思うかい?ギの黒帯保持者なら知っていて当然のレベルだよね。それらの知識を必要としないノーギの黒帯保持者が、ギを学び始めてすぐに黒帯を巻くのはおかしな話だ。柔術を学んだ私は、柔道の一部を理解することはできるが、柔道特有のルールがあるのだから、柔道の道場に黒帯を巻いて行かないのと同じ事さ。
さて、もう一つの質問に関して、「ギの黒帯保持者がノーギのクラスに行ったとして、彼らはノーギのクラスでも黒帯ですか?」
ブラジルでは実際のところ、そうではないかもしれない。
いや…私の推測だが、彼らはそうするんじゃないかな。ただ、他のノーギの黒帯保持者よりはうまくはならないだろうね。
ギにはノーギよりも多くのオプションがあるから、ギを学んだ人が選択肢を減らせば調整はすぐにできると思うよ。でも、オプションを追加する必要がある場合は、たくさんの知識を取り入れる必要があるから、はるかに困難なんだ。私はギの黒帯保持者のノーギ未経験者を、4〜5ヶ月あればノーギの黒帯を取得させる事ができるだろうけど、ノーギの黒帯保持者のギ未経験者に黒帯を渡すには数年はかかるだろうね。
(ジェイク)
君の意見に賛成だ。
ただ 別の意見で、「ノーギは簡単だよ。柔術でやっているのと同じことをやればいいだけだ」という伝統主義者たちもいるんだ。
しかし、それは少し誤解を招くと思うんだ。
ノーギには ギロチン、ダース、フットロックなど一般的なものがあるが、これらはすべてノーギで学んだ方が習得が早いよね。
ノーギのみをトレーニングしている人の利点は、彼らには柔術家にはない知識の泉がある。そうは思わないかい?
(ブレント)
もちろんだよ。
これまでギとノーギの全員に圧勝し続けてきたレアンドロ・ロが、2018年のアブダビの試合では1回戦で負けてけてしまった。最高のパフォーマンスを発揮してきた彼でさえ、ノーギの試合で負ける可能性はあるという事実。
私が言いたいことは、上達する期間の違いなんだ。
柔術家がノーギを学び始める人にとって調整はずっと簡単だが、ノーギからギに行く人たちは、デ・ラ・ヒーバガード、スパイダーガード、それにラッソガードなど、たくさんのガードを学び始めなければならない。そしてそれはただのガードで、ガードをパスする方法も学ばなければいけない。学ぶべき事が山積みなんだ。
ラペルやラッソを習得した人が、ノーギを始めてすぐの頃は混乱している様だが、しばらくすると理解できているんだ。
(ジェイク)
確かに... ギとノーギの豊富な経験者で、独自のゲームのスタイルを確立した、マルセロ・ガルシアを思い出したよ。彼はラペルグリップをあまり使わない。
ブレントはそのアプローチは好き?それとも極端なギのグリップバージョンもやるかい?
(ブレント)
私は極端なんだ。ギを学び始めたとき、ギにだけに集中しようと思ったし、ギのためにノーギをするつもりもなかったんだけど...
その極端なやり方に終止符を打ったんだ。
世界で最高の格闘家の一人に反対することはできなかったし、マルセロの言うことは理にかなっているよ。だから多くの人は、この議論に関して同じところに帰結することを知っているんだ。
これらの「ギ vs ノーギ」の議論を交わす多くの人は、試合には参加しない。
彼らはやってみるより、それについて議論をするほうが好きなんだ。
たとえば、「総合格闘技ならノーギをやる方がはるかに優れているよ。」と言う人に「あなたはMMAで戦っている選手ですか?」と聞いたら、
「いや、でもこのチャンピオンもやってるいし、MMA選手ならそうすべきだと思ったから。」と答える。
私は彼らに「ただ トレーニングを楽しんで、好きなものを好きなようにやってみてはどうかな。」と言っているけどね。
もしあることが誰かを上達させれば、別のある事が別の人を上達させる。
ジェイクはシステム的に賢明な話しをているし、それは理にかなっている。
マルセロががやっている事もね。
私は一種のオールインタイプの男だよ。
ノーギはギよりも技が少ないため簡単だと思われがちですが、必ずしもそうとは限らない。ギとノーギは二つの異なるスポーツであるという考え方もあります。という内容も含まれています。
*ここでは、ギとノーギを以下のように定義します。
- ギ* : 柔術衣を着用するグラップリング
- ノーギ* : 柔術衣を着用しないグラップリング
ブレント・リテル (Brent Littell) は、世界でも数少ないギとノーギでのブラックベルト保持者です。エディ・ブラボーが認定した6人目のノーギブラックベルトで、グレイシーバッハでのブラックベルト(ギ)はノーギブラックベルト保持者で初めてとされています。ブレントの指導経験は豊富で、世界中で最も有名なBJJアカデミーでも指導をしています。ブレンドは10thプラネット本部があるハリウッドで初のファンダメンタルインストラクターとなり、その後グレイシーバッハ本部のインストラクターとして活躍。ギとノーギ柔術両方の知識、そしてアメージングな指導スタイルがブレントを世界中で慕われるBJJ指導者の一人とさせています。指導の幅は広く、ビギナーからUFCファイター、そしてワールドチャンピオンまで。彼の指導方法は複雑な概念を誰でも習得できるようにするものです。
ブドー・ジェイク(Budo Jake)は、Budovideos Inc. の創始者で、合気道歴20年、合気道師範歴10年、カーロス・グレイシーJrからブラジリアン柔術を学び、黒帯を授与され、トップクラスの競技者や指導者の多くとトレーニングをするために、地球上を旅してきました。現在は、O.C. Jiu-JitsuとSpectra Yogaで指導をしています。
功績:2013 BJJ National Champion, 2020 Yoga Olympic Games World Champion
【翻訳】田中恵里子